1987年



『さびしんぼ』ええ言の葉のひびきなのである。大林宣彦監督の映画。全編にショパンの「別 れの曲」がながれて、今ではその曲を聴くにつけ尾道と瀬戸内海を思い出す。

  私の親は広島出身で、海関係の仕事についていた。船が呉のドックに入ると、不登校のボクはおやじに会いに喜んで電車に乗る。親類が旅館をやってる鞆の浦、尾道から竹原、呉へと。尾道の町に入ると大きく列車は海岸線のカーブに沿って曲がる。そのとき車窓にさし込む光がゆれる。河のようなうち海はおだやかで、ゆったりとした時を刻む。夕暮れどきの瀬戸の海岸線を走る列車は、のほほんとする光景だ。太陽のひかりが、ほのかにあたたかく、そして揺れる。海からの反射光が子どものときは大好きだった。その華やかさとさびしさを。


  尾道を撮った映画としては小津安二郎監督の『東京物語』(1953年)だろう。カーブするレールを蒸気機関車が走る。それしか覚えていない。そう佐々木先生に似ている 笠智衆さんもでていたなぁと。いい映画だとは思うけれど学生時代に観てもなんとも感じなかった、そんなものである。枯れ線くらいの歳だと違う見方なんだろうなぁと。観る年齢が「あぁ、あんな、、そうか」となるのが映画だ。その点『さびしんぼ』を含む大林宣彦監督の尾道三部作と呼ばれている『転校生』(1982年)、『時をかける少女』(1983年)、『さびしんぼう』(1985年)は、ぴったぁーときた。尾道は何度も行ってるけど、あんなええとこあるんや、と。そんをした気分だった。


  1980年代後半そういう男子が数多くいたのだ。その中に奥村さんと15期生カンちゃんと17期生安田くん、そしてボクがいた。尾道を舞台にした大林監督の映画談義をしながら
「尾道ってそんなにええ所?」
「行ってみたいなぁ」と奥村旅館で日び語られていたのだ。
「細谷のりお(ほんとは典代で女の子なのだが)が尾道出身やでぇ」と同期の安田くんが言う。
「あのカワイイ、細谷さん。いこいこ」
「行こって、どうするの?」


  話しはそこで終わるのが普通らしい。でも行ってしまうのが奥村旅館の住人なのだ。迷惑な話しと受け取る方は、人生を楽しめない方。「いやぁ行動力有るなぁ、でその女の子かわいいんでしょ、いいなぁ青春だなぁ」と。これが人生楽しめる方。奥村旅館はラテン、スパニッシュ系の人が多い。

  こんな旅、この「尾道さびしんぼ旅行」の他にも、「イカそうめんの本場呼子ツアー」、「福井かにかにツアー」とか言ってお邪魔しましたね。懲りない面 々、ほんと佐々木ゼミのみなさんにはお世話になりました、楽しかったぁ。

つづく→

 
 

 


by まこと




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