尾道は山が迫っていて坂道の町だ。そしてお寺さんが多い、しかもいい感じのお寺さんが。そんなお寺の息子の高校生が土蔵の掃除中にばらまいた写
真から騒動がはじまる。通学途中で自転車が壊れて困ってる憧れの君に、手をさしのべてから。写
真からとびだした「へんて子な女の子」と憧れの君がおんなじ。へんてこな話し、ええんよねぇ。
写真がポイントとなっているからなおさら気になる。写真小僧の奥村さんやボクにとっては、シャッター音とともに写
真が語るのである。写真には人物を撮ってもそのまわりにある文化や文明を映し出している。それがこの映画でも鍵になる。
まず有名な喫茶店でロケ地めぐりのさんだんをする。細谷さんは安田君から「尾道の案内せい」としか聞いていないらしく「なんで坂道とちいちゃな小路がめずらしいの」と。「尾道の喫茶店なら(林)芙美子でしょ」「いや、映画の関係者のたまり場のさてんがええねん」と奥村さん。それはそうである、映画を観て、尾道が大好きになった人以外には、どこでも単なる生活の一部なのだ、観光なら晴れの場所の尾道を紹介する。この商店街にはなつかしいええたたずまいの銭湯もある。(2009年、たたずまいはそのままで、おみやげものやさんに変わってた)
主人公のお寺をめぐり、タイル小路を抜け、お墓を行き、そして坂を降り、渡船場へと。尾道からすぐ前の島へ渡船が行き来している、これがまたええ。憧れの君もこの渡船に自転車乗せて高校へ通
ってる。ボクたちも渡船に乗る。毎日通学で渡船なんていいシュチュエーションやね。なんだか自転車通
学の女子高生が、だれもみなかわいく観えてしまう。
「あぁ、八尾じゃなくて尾道で高校生活送れてたら、ボクの人生変わってたやろなぁ。その点奥村さんやまこさんはおしゃれな町神戸やもんなぁ」
「それでも人生変わる事なく、こうしてカンちゃんと尾道きてるもんなぁ。人生なんて他人の芝生はええように見えんのよ」
そう言っていたかんちゃんは、二度も結婚し僕たちがしたくても出来ないくらいの幸せな人生を歩んでいる。
細谷さんと、彼女の友達のふたりはなにがそんなにめずらしいんだろうと、迷惑を面
白がって付き合ってくれる。彼女たちの高校時代はきっとふつうの高校生活だったんだろう。
でもかんちゃんの言う通り、こんな町で高校生活をおくれることは幸せなのかもしれないなぁと。気分が滅入ればお寺の石段にでも腰掛けて、友人とおだやかな海をみながら話せばいいんだから。
日常生活している自分の町が、そんなに特別とも思ってもいないふたりと映画に入り込んだ四人衆。佐々木ゼミの人は、気が長いのか迷惑も迷惑と感じんドンカンなんか、まるまる一日つきあわせてしまった。ありがと。
___ 広島出身者をみわけるのは、この「ありがと」イントネーションに特長があり「う」が無いにちかい。ばあちゃん子のボクは時々広島弁がなつかしい。
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