13期生 阪口正己
 

香港の日常生活考

 

香港の衣食住について

 
着るものは、デフレ日本といい勝負で、価格は安い。
  特にブランドもので、夏、冬のバーゲン期間中は、だんだん安くなり、2割引きから 始まり、6割引き程度にまで下がる。ただし、6割引きになるころには、商品も少なく なり、選択の余地がなくなってくる。私は、背広等は、4割引きのころ購入していま した。 ピエールカルダンの背広で、定価4000香港ドルのものが、2400香港ドル(@15、 36,000円)程度になる。
  同じものが、日本では80,000円程度なので、かなり安い。 ただし、安い店、安い時期を探し当てるのに、時間がかかるので旅行者には、難しい かもしれません。実際に住んで歩かないとわからないことが多いようです。

  食べるものは、中華料理の本場であり、香港ライフを楽しむうえでの最重要ポイント である。 中華料理の中で、一番手軽で、安く、楽しめるものは、やはり、飲茶。 高級レストランでも、昼間は飲茶が楽しめます。 一皿に2〜4個程度の点心がのっているので最低3人以上で一緒に食べたほうがよいの です。
  最近日本でも飲茶が楽しめるところが増えたようですが、香港の飲茶は手軽でかつ奥 が深い。店によって、多くのオリジナルの点心があり、飽きることがない。
  私の住んでいた家のから最寄の地下鉄の駅まで約100メートル程度ですが、そのあた りに日本人でも行けそうな店が10件以上はある。現地人が行く店は30件は越えている と思われる。
  値段も、日本人の行けそうな店で、1人一食30ドル(450円)から100ド ル(1500円)程度と安い。日本で食べると、恐らく3〜5倍の値段がすると思う。 夜、中華レストランに行くと少し高い。1人一食150ドル(2,250円)から1,000ドル (15,000円)と高額になる。
  また、一皿の量が多いので、5人以上いないと色々なも のを食べられない。間違っても、1人で行くと大変。焼き飯(チャウファン)一皿の みで、終了ということになってしまう。

  最近は、観光客用に「2人世界」という、2人で 食べれるメニューも出てきているが、やはり中華は大勢でないと駄 目。テーブルは、 6人から12人用が普通。 12人というのが、ベストな人数。豪勢に10以上の料理を味わえ、一番お得な食べ方で す。
  中国では家族、親戚づきあいが強く、ことあるごとに、全員が集まり食事を共にす る。 食事が人間関係の中心にあるのです。話をしやすいように、円卓も発達したものと思 われます。
  広東料理は、わりと薄味で日本人にも食べやすい。もっと、日本人に合うのは、潮州 料理で、広東料理より少し甘め。このフカヒレは絶品。 上海料理は、安い店のしっかりとした味がお勧め。高級店は、まろやか過ぎて、広東 料理に近くなってしまい、イマイチ。
  北京料理は、油濃く、少し体に悪そう。 台湾料理もイマイチ。最後に私のお勧めは、四川料理。辛いので有名な料理ですが、 高級な四川料理には、辛さの中に、本当の味わい深さがあり、最高。残念ながら、日 本では、 香港レベルの四川料理店をまだ見つけておりません。日本で四川という名前のついた レストランの大半は偽者で、日本人向けにマイルドな味に落としてあります。

  中華料理以外にも、本場のインド料理、韓国料理、タイ料理、ベトナム料理、インド ネシア料理、アラビア料理、欧州料理等世界中の国の料理を手軽に食べれるのも香港 ならではかと思います。 ひとつ忘れてならないのが、日本料理で、香港人の口に合うようアレンジされた、日 式料理と、本当の日本料理の2種類があります。
  日式料理は、昼飯で20〜100ドル程度 と安く。 日本料理は、60〜300ドル程度と高めです。日式料理でも、カツ丼、うなぎ丼、程度 は日本人でも食べれます。安く上げる際に、活用しておりました。しかし、日本料理 は、日本人が日本から空輸してきた食材を使う場合が多く、当然、日本より高く、 1.5倍以上の値段となっていたと思います。香港で日本料理を食べることは、やはり 贅沢なことです。 あたりまえのことですが、香港では日本料理を食べる前に、中華料理をいやというほ ど食べることを心がけたほうが良さそうです。



住環境について

  住むところは、世界一高いと思う。 香港島で日本人の多く住む太古城(タイクーシン)のアパートで、50平方メートル
程度で、 34,000香港ドル(@15、510,000円)程度になる。日本で100,000円もしないぼろい家 が、その5倍もするわけで、これはひどい。
  ちなみに、日本人の女性が日本の会社の閉鎖性にあきあきして香港にたくさん来るわ けですが、その女性の方々の住んでいるところは、かなり悲惨です。月給200,000円 程度では、香港では人並みの生活(日本人の考える普通の生活)は無理です。
  私は、 8割近く会社の補助で生活していましたので、香港で自活することは、不可能とすぐ に悟りました。 香港で成功している日本人女性は、英語、広東語がネイティブ並みで、セブン・イレ ブンを実践しているモーレツ、キャリア・ウィメンという感じでした。成功する女性 は、恐らく香港にきた女性の1%以下の人たちと思います。
  逆にこういう能力のある女性を海外に出すしかない日本の社会の閉鎖性も大問題なの ですが。ともかく、家は高い。 家賃が高いので、夫婦共稼ぎしないと生活できない、共稼ぎするために、子供はフィ リピン人のアマサン・同居の家政婦さんに面倒みてもらっている。1ヶ月4000ドル(6万 円)程度で雇えるので、手軽に雇える、という状況です。


広東ポップスについて

  私が中学生のころ好きだった歌手に、アグネス・チャンがおりまして、香港で出し た、 LPレコードをよく聴いておりました。ところが、香港に行ってみて、アグネス・ チャンを知っている人はほとんどいない。わずかに数人、昔、「サークル・ゲーム」 という「いちご白書」という映画の主題歌のカバー曲を歌っていた歌手がいたなとい う人がいるだけで、彼女は香港では、歌手としての知名度はないのです。

  ただ日本で よくテレビにでる俳優ということでは、若干知られているようですが。 逆に、テレサ・テンの人気はすごい。1995年、私が香港に行ったころは、彼女が亡く なった年ということもあり、あちこちで彼女の歌が流れ、レコード屋には、彼女のCDが大量 に並べられ、かなりの売り上げを上げている状況でした。
  私が日本にいるころ、テレサ・テンは私の嫌いな演歌歌手の部類で、聞く気もしませ んでしたが、香港にきて、中国語(主にマンダリン)で歌う彼女の歌はすばらしく、 なぜ中国圏で人気があるのか、よく理解できました。
  1998年に、「漫歩人生路」というテレサ・テンの人生を描いた広東語の ミュージカルがあり、彼女の人生のことを始めて知ったわけですが、彼女の思いは、 母の生まれ故郷で、決して戻れない中国本土にあったようです。台湾、香港で活躍し ても、台湾生まれの彼女は、北京でコンサートはできないので、日本語の歌を使い、 中国本土でコンサートを開くことを考えていたようです。
  もう少し長く生きていた ら、成功したと思われますが。 このあたりにも、中国の複雑な問題が見えます。

  このミュージカルの主人公役は、陳潔儀という歌手で、中国語圏では代表的な歌手の 一人です。一応、私もファンの一人であります。 香港はコンサートも手軽に楽しめるところでして、よく家族で見に行きました。 王非(ウオン・フェイ)、張学友、サミー、レオン・ライ、ア・メイ、レスリー・ チャン、 アンディ・ラウ等の有名歌手のコンサートを楽しむことができました。
  通常コンサートは、夜8時30分より、11時から11時30分くらいまで続きます。約3時間 休憩なしで、歌い踊り続ける歌手もおり、日本のコンサートがいい加減に見えるほで です。これだけ充実した内容で、値段も100ドルから400ドルが相場で、私の場合、 200ドル(3,000円)程度の、中ほどの席を買っていました。コンサートのよくある香 港コロシアムから、自宅まで、バスで30分程度(10ドル、150円)で帰れるのも魅力 でした。

  日本では、前売り券の入手も面倒ですが、香港ではコンサート1週間前でも購入可 能、更に、400ドルの席で良ければ、当日会場に行っても入手できることが多いよう です。 また、CDの値段も通常100ドル以下でして、私のよく行くわワンチャイという町で は、60ドル程度で購入できました。実は、日本のCDもその程度の価格で手に入れるこ とができました。台湾ルートの廉価版は30ドルと超破格値で、出回っていました。

  これは、法律違反ですが、偽物のCD、VCD、DVD等も多く出回っており、値段 は、 10ドルから20ドル程度でして、香港人の家庭で偽物を持っていない家庭はまずない、 といわれるくらい偽物天国でした。最近、香港も取り締まりが厳しくなってきている ようですが、中国本土はまだまだ偽物天国のようです。
  但し、日本の通関は厳しいようですので、香港みあげに偽物を買うことは、お勧めで きません。言うまでもないことですが。 広東語ポップスは、軽快なリズムで、非常にのりのよい音楽です。対してマンダリン の音楽は、きれいなメロディに合います。今、家で有線放送を聴きながら、これを書 いておりますが、D−38,39チャンネルでこれらの音楽が楽しめます。

海外旅行について

 香港は狭いところなので、ちょっと旅行となるとすべてパスポートを使う海外旅行と なります。カナダ、アメリカ、オーストラリア、イギリス、シンガポール、タイ、韓 国、マカオ、中国桂林等いろいろ巡り歩いたのですが、ひとつ日本のおかしいことを 挙げますと、ホテル代が高い。3人家族で泊まっても、1ルームの代金ですむ外国と違 い、日本は3人分別々にとる。
 実際値段も3倍近くなる。何か、おかしいと思いません か。 但し、香港人の日本ツアーの代金は安い。ホテル代も格安で、恐らく、ダブル・スタ ンダードと思います。日本のホテルは、日本人差別をしているのでしょうか? バンコクのホテルは、1泊家族3人で1万円も出すと、地上の別世界のような豪華なホ テルに泊まれます。
  日本のホテルが馬鹿らしくなります。 一番ホテル代の高いといわれるロンドンでも、同15,000円程度でそこそこのホテルに 泊まれます。まだまだ、日本のホテルは高い。

  航空運賃は、日本もそこそこ頑張っていまして、最近外国に負けない安いチケットが でるようになってきました。 日本人が住みやすいところとしては、カナダ、バンクーバーあたりと思われます。何 しろ、 治安がよく、日本食の店がたくさんあり、それも安い。
  寿司は日本より安く、味もよ い。 但し、仕事を見つけるのは難しいので、移住は簡単ではない。宝くじでも当てたら、 住みたいところです。実際、ここは金持ちの年金生活者が多い町のようです。
  タイも日本人に人気があります。あまり金持ちでなくとも、物価が安いので生活可能 です。 但し、発展途上国なので、衛生面等気おつけないと、病気にかかります。無菌状態に 慣れた日本人には、厳しいかも知れません。香港から韓国、ソウルへ行くと、日本に帰ってきたような感覚になります。
  理由は、 建物、町並みが日本に似ているからです。日本を真似してきたように思われます。


床屋事情

  香港には日本のような床屋は少ない。 似ているのは、上海式床屋。日本と同じような理髪店だが、顔そり用のナイフが不清 潔そうで、要注意。顔そりは、ご辞退したほうがいいと、友人から教わった。 一般的な理容室は、すべて男女共用。日本の美容院といった感じ。恐らく、50箇所以 上の床屋を経験したので、香港の床屋事情については、かなり勉強できたと思う。
 安い店は、50ドル程度からあり、120ドルを超えると高級店。金持ちの日本人は、200 ドルから400ドル程度の店にいっていたよう。私の場合、130ドル程度の現地人の行く 店が、一番気に入っていた。 最初にシャンプーを20分程度念入りにしてくれる。
  頭から肩にかけてのマッサージで 眠くなる。その後、カットが、30分、最後に軽く洗髪のうえ、髪を乾かし、セットし て合計1時間、それで130ドル(1,950円)である。 日本の3分の1程度の値段と思う。 日本の大衆理容は、シャンプーつきで1,900円なので、比べ物にならない。

  日本の大衆理容レベルなら、香港では60ドル(900円)程度と思う。 60ドルレベルでも特に問題ない。我慢できるレベルである。 安い理由は、香港には理容師の免許制度はなく誰でも店を開ける。実際家から歩いて 10分以内のところに50件以上の床屋があり、競争が激烈である。サービスが悪い店 は、すぐに潰れる。1年以上前からあり、人の多く入っている店は、入ってもまず失 敗しない。

  但し、片言の広東語は必要。英語の通じる店はそれだけで値段も高くなる。まして日 本語の通じる店は、3倍程度高い料金を払うはめになる。 Language is Money とある香港人が言っていたが、その通りである。 店がよく潰れるというのは、香港の常識です。 いつもどこかで閉店セール、開店セールを見かける。
  6年ぶりに日本の街を歩くと、結構、昔からある店がたくさんある。香港では、そう いった老舗クラスの店は少ない。競争が厳しいため、時代遅れの店はすぐに消えてい く。

  国の管理が弱いため、市場がすべてを決めてしまう。資本主義の原点をみるようなと ころである。ここが、香港の活気となり、魅力なのかも知れない。 なかでも香港の金融は世界的にも力が強い。 香港上海銀行(HSBC)などは、英国系資本であるが、香港で収益を上げて、英国 本国の大手Midland Bankを買収するなどし、世界的レベルの銀行にのし上がってい る。 ということで、次ぎは金融についてです。

→つづく

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佐々木ゼミ13期生 阪口正己

 
 

 

 
 
 
 

 

 




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