「集団力学と私1」関西学院大学佐々木薫教授最終講義2003.1.22

2003.1.22(wed)関西学院大学第2時限10:50-12:20、B204号教室で
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 アメリカのウオルマンがインストルメンタルシュチュエーションの研究の中で集団を自分の個人的な欲求を充足させるための手段として使うという研究があります。


  心理学部の学生に10名の心理学者の名前を書いて有る答案を配り、それについて知っていることを書きなさいと言う小テストのようなモノをやったわけです。


  ただ他の人に聞いてもよい、ただその人の言葉ではなく自分の言葉に置き換えて答案を書くと言う状況ともうひとつ、グループで出きるだけ良い答案をだすために話し合いながら答案を書くと言う。


  その集団の中に研究者がおくりこんだふたつのタイプのサクラが居ます。模範解答を知っているけれど無愛想な人と愛想よくて仲間をまとめるがなにも知らない人と。課題遂行型のリーダーと集団維持型のリーダーと。そうすると圧倒的に無愛想でよく知っている人間がリーダーとして選ばれる。


  まぁ考えてみると実験することもなく結果がわかっているようなものですが。私が面 白いと思ったのは、グループシュチュエーションを分けるということで。私のテーマからいくと、内向的な人と外向的な人では人に対す違いが有るわけですね、でもある状況の中ではその違いが薄まるのではないか。


  インストルメンタルなグループシュチュエーションでは内向的なメンバーと外向的なメンバーの構造的な特徴がよくあらわれるのですが、ベクトリアルグループシュチュエーションでは差を確定することが出来ないくらい似かよってきます。集団は単なる個人の加算集積ではないことの証明になったのではないかと思います。
 

 修士論文では「子どもにおける利他性の実験的研究(他者への配慮)」1年生.3年.5年と研究しまして、小学校3年生のところに重点を置きましたが。魅力の違うふたつのおもちゃを置きまして、力をつけて押してやると火を吹きながら走る魅力的なおもちゃとふつうのおもちゃでどちらをお友達に貸しますかと言う実験です。


  これはレビンのお弟子さんがアメリカでやった実験で魅力的なおもちゃとそうでないふつうのおもちゃと、お友達が来たらどちらを貸してあげますか?と魅力的なおもちゃを貸すといえば利他行動となるのですが。その実験を日本でやればどうなるか?


  それを三隅二不二教授がアメリカからの留学から帰ってこられたとき課題として持って帰られたわけです。それを日本でやってどんな結果 になるかデータが欲しいと。


 これをやれといっても、勝手におもちゃを持ってきてやって何%の人が利他的行動にでたと言っても、向こうのデータとの比べようがないですから。それで魅力の度合いを計る物差しが必要だと、それで何本の鉛筆とならそのおもちゃを交換しますかと鉛筆の本数でそのおもちゃの魅力を計ったのです。


  その実験結果を持ってフルブライトの交換留学生でアメリカへ渡ったのですが、今の日本と同じような状況ですが鉛筆の価値がアメリカではどこかに落ちていても拾わないような価値で、これはとても向こうの実験と比べられる状況ではないことにがっかりしましたが。


 フルブライト留学生としてアメリカでの私にとって大きな出会いがふたつ有ります。ノルゥエーのR.ロメティバイトと言う社会学者がアメリカで「役割と規範」と言う本をだしてまして、その中で送られた規範と受け取られた規範と言う事を書いています。


  そのふたつの規範の間にずれが起る。実際に送られた規範と、受け取った側ではずれが生じていると。しかし彼は両方とも規範であると言ってますが。

→つづく


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