「集団力学と私」関西学院大学佐々木教授最終講義2003.1.22
2003.1.22(wed)関西学院大学第2時限10:50-12:20、B204号教室で
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 修士論文では「子どもにおける利他性の実験的研究(他者への配慮)」1年生.3年.5年と研究しまして、小学校3年生のところに重点を置きましたが。魅力の違うふたつのおもちゃを置きまして、力をつけて押してやると火を吹きながら走る魅力的なおもちゃとふつうのおもちゃでどちらをお友達に貸しますかと言う実験です。これはレビンのお弟子さんがアメリカでやった実験で魅力的なおもちゃとそうでないふつうのおもちゃと、お友達が来たらどちらを貸してあげますか?と魅力的なおもちゃを貸すといえば利他行動となるのですが。その実験を日本でやればどうなるか?それを三隅二不二教授がアメリカからの留学から帰ってこられたとき課題として持って帰られたわけです。それを日本でやってどんな結果 になるかデータが欲しいと。
 これをやれといっても、勝手におもちゃを持ってきてやって何%の人が利他的行動にでたと言っても、向こうのデータとの比べようがないですから。それで魅力の度合いを計る物差しが必要だと、それで何本の鉛筆とならそのおもちゃを交換しますかと鉛筆の本数でそのおもちゃの魅力を計ったのです。その実験結果 を持ってフルブライトの交換留学生でアメリカへ渡ったのですが、今の日本と同じような状況ですが鉛筆の価値がアメリカではどこかに落ちていても拾わないような価値で、これはとても向こうの実験と比べられる状況ではないことにがっかりしましたが。

 

 フルブライト留学生としてアメリカでの私にとって大きな出会いがふたつ有ります。ノルゥエーのR.ロメティバイトと言う社会学者がアメリカで「役割と規範」と言う本をだしてまして、その中で送られた規範と受け取られた規範と言う事を書いています。そのふたつの規範の間にずれが起る。実際に送られた規範と、受け取った側ではずれが生じていると。しかし彼は両方とも規範であると言ってますが。
 もうひとつの出会いが、J.ジャクソン、みなさん耳にタコができてるかもしれませんが、リターンポテンシャルモデルReturn Potential Model。これはなかなかおもしろいとアメリカで思ったのです。
 例えば5人くらいのグループでひとりでみんなの時間を独占して喋ってると嫌がられますね、でも逆に全然喋らないのも嫌がられる、ではどれくらい発言すればいいか。何回を過ぎると嫌がられるか何回までの発言ならいいのか、横軸に発言の回数、縦軸にそれに対する評価、上がポジティブな評価をアプルーバル・是認、下がネガティブな評価をディスアプルーバル・否認ですが、ほんとうは違うんですね、日本語の否認とは、私は最初は「非」認と言っていたのですが、私の仲間が否認と使いだしまして、それで私もひきづられるかたちで否認と使っているのですが。
 縦軸がリターンなんです、それぞれの行動を取ったときにグループからどういうリターンが返ってくるか。それも両端のようなことはほとんど起りませんから。その部分はポテンシャルなわけです。もしこういう行動が起ったらこういうリターンが返ってくるだろう。こういう表現ができるとすれば色々と面 白いことがひきだしてこれるのではないかなぁと。
 強度の異なる規範の例示の図で「強度が大」と書いてあるグラフのように谷が深くて山が高いグラフだといいことと悪いことがはっきりしている。「強度が小」と書いてあるグラフのように谷が浅くて山も高くないグラフだと良いことをしても悪いことをしても、あまりリターンがないということになります。これは非難もなければ誉めてももらえない。  それからもうひとつ、ディスアプルーバル・否認の評価ばかりの非難されることの多くて、アプルーバル・是認はほとんどない、それが次のグラフですが「威嚇的規範」と、そして逆にアプルーバル・是認されることが多く非難されることはほとんどない、これをサポーティブ、少々へまなことをやっても許してもらえる「支持的規範」と。彼はそれを理論化するために上に出た部分、山の平均ですね、それと下に出た部分谷の平均の比でもって表しました。  それと規範の結晶度ということが考えられるのですが、これは一人ひとりのメンバーに答えさせてグラフかにすると、メンバーそれぞれがばらつきがあると結晶度が低いと、逆に少ないと結晶度が高いと言えるのですが。
 (佐々木先生の講義はまだまだ続きます)

2003.1.22(wed) at KWANGAKUKAIKAN ©SASAKI Semi.Kwanseigakuin Univ. SASAKI SEMIメールはこちらまで